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受講後に童話賞を受賞し、プロデビュー!「原動力はわくわく」木内南緒さん

2021.03.09
公募スクールの「童話・児童文学添削」を受講後に第35回福島正実記念SF童話賞を受賞しプロデビューした、木内南緒さん。執筆を始めたきっかけや、受賞まで書き続けられた理由を伺いました。モチベーションを保つのが苦手なあなたは必見!
木内南緒(きうち・なお)さん

大阪府生まれ。愛媛県松山市在住。2020年に『AI、ひと月貸します!』で第35回福島正実記念SF童話賞を受賞し、プロデビュー。改題して出版した『AIロボット、ひと月貸します!』(岩崎書店)で第36回愛媛出版文化賞の文学部門賞を受賞。

 

また最終選考で落ちるのは嫌だ
――『AIロボット、ひと月貸します!』が第35回福島正実記念SF童話賞と第36回愛媛出版文化賞の文学部門賞をダブル受賞。進学塾の模試に採用され、韓国語版の翻訳出版も決定されたそうですね。
木内南緒さん(以下木内さん) とてもありがたいことです。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、福島正実記念SF童話賞の授賞式は延期になり、受賞作は編集者さんとお会いできないまま出版になりました。歯がゆい状況でしたが、私の分身である作品はテスト問題に変身したり、海を越えてくれたり……とても頼もしいなと思っています。本を出すと、出版前には想像もつかないようなチャンスが広がるんだというのは新たな発見でした。
デビュー作

『AIロボット、ひと月貸します!』
(岩崎書店・1,200円+税)

小学4年生の栄太と栄太の分身AIロボット・エイトの1ヶ月の交流を描いた、心が温かくなる作品。

――第33回福島正実記念SF童話賞は最終選考で落選し、第35回で大賞を受賞されました。第34回には応募されなかったのでしょうか?
木内さん 第34回に応募できるようにはしていました。最終選考に残ったので、賞と自分が書くものが合うんだなと感じていたんです。だから、余計にまた最終選考で落ちるのは嫌だなと。求められている作品と、自分の作品にはどれくらい差があるのだろうと考えたときに、「まだ直せる」と思ったんです。だったら、できることはなんでもやってみようと思って、今までで一番丁寧に作品を推敲することにしました。それで、第34回は応募をやめました。
――童話賞以外にも様々なジャンルの賞に応募されていたそうですが。
木内さん 最初はエッセイやミステリー、エンタメ小説などいろんなジャンルの作品を書いて応募していました。なかなか受賞には届かなかったのですが、毎年一次選考くらいは通過していて、「がんばれよ!」と励まされているような気持ちになりました。一番早く最終選考に残ったのが、福島正実SF記念童話賞とちゅうでん児童文学賞だったので、それからは童話や児童文学の賞を中心に応募していました。
つらいとき、本に助けてもらった
――執筆活動を始められたきっかけを教えていただけますか?
木内さん きっかけは司法試験に落ちたことなんです。ちょっと変わっていますよね。(笑) 結婚後、夫の勧めで司法試験に挑戦しました。一から通信教育で学んでロースクールにも通って……、結局落ちました。「努力してもダメなことってあるんだな」と、精神的にも肉体的にもぼろぼろになった、大きな挫折でした。
――大変な経験でしたね。
木内さん 落ち込む中で「これからは判例集とかじゃなくて、好きな本を読めるんだ!」と気づいて、今度は本を読むことにのめり込んでいきました。ある日、「これだけ読んだら私にもお話が書けるかも?」と思い立って、やってみたらとても楽しくて。「やっと自分に合うものを見つけた!」と思いました。回り道はしたのかもしれないけれど、あの挫折が無ければ執筆していなかったかもしれないし、ロースクールで鍛えた論理的思考力は執筆に生かされていると思います。
――お話を伺っていると、木内さんの中には「プロになろう」という意識はあまりなかったのかなと思ったのですが。
木内さん 思い返してみると、「プロになろう」と思ったことは一回もないですね。「自分の本を出してみたい」というのが賞に応募したときの正直な動機です。もちろん、プロになることと同義だとは思うのですが。当初から、受賞したら本を出せる応募先を意識して探していました。
――「本を出す」ということにこだわりがあるのですね。
木内さん 先ほどお話しした挫折の経験から「つらいとき、本に助けてもらった」という思いが強くて。本を出すことで、本に恩返しができるんじゃないかと思いました。それに、本を出すって夢があるじゃないですか。応募作を書いているときに、「プロになろう!」って思うとすごくプレッシャーを感じると思います。でも、「本を出そう!」って思うとわくわくできるんです。自分がわくわくする方に目標を置き換えて、賞に挑戦するモチベーションを保っていたんだと思います。
――モチベーションを保つための工夫でもあったのですね。
木内さん 何か工夫しないと書き続けられないと思います。どうしたら作品が面白くなるのか試行錯誤しても、進んでいるのか下がっているのかわからなくて、心細さはありました。
落ち込む時間を決める
――わくわくできる目標に置き換える以外で、モチベーションを保つ工夫はされていましたか?
木内さん 年間の応募計画をたてて、いつも何かの賞の結果待ちになるようにしていました。落ちてへこんでも、「また次の賞がある!」と気持ちを切り替えられるように。あと、落選したときは落ち込む時間を決めていました。「電話で友達に話を聞いてもらったら終わりにしよう」という風に。作品が選考に残るようになってくると、「自分が進んでいる方向は合っているはず!」とむりやりにでも自分を信じるようにしていました。行き詰ったら猫をさわって癒してもらうことも、モチベーション維持になっていたと思います。(笑)
――自分の気持ちをうまくコントロールすることが大事なのですね。
木内さん 執筆することだけではなく、全般に言えることだと思います。自分の機嫌の取り方を知っていると楽ですよね。書くことが嫌になってしまったときは、それはそれで気持ちを認めて、でもなるべくそういう時間は短くするように気をつけていました。
――執筆の時間はどうやって確保していたのですか?
木内さん 応募計画を立てることで、締切から逆算してスケジュールを組めるので、時間は捻出しやすくなると思います。図書館の自習スペースにパソコンを持ち込んで自分を追い込む場所をつくったり、書く時間をとるために家族に協力してもらったりもしていました。執筆はどうしても後回しになってしまうんですよね。プロじゃないし、執筆してお金をもらえているわけじゃないから、他の優先すべきことが出てくるとなかなか書けなくなってしまう。そういうときはあきらめて、できるときにやろうと気持ちを切り替えていました。
――今後の目標を教えてください。
木内さん 書くことは続けようと思っています。「児童文学」といっても、幼年童話からヤングアダルトまで幅広いんですよね。今までいろんなジャンルの作品を書いてきたし、悪い人が出てくる話や怖い話も好き。『5分ごとにひらく恐怖のとびら百物語 4』(文溪堂)というホラー短編集に「幽霊が見える」という作品を載せてもらったこともあります。これからもジャンルにとらわれず書いてみたいです。「前の自分を超えよう」と今まで挑戦してきたので、今後も限界を決めず挑戦していきます。
――2冊目の出版予定は?
木内さん 2021年の秋頃に岩崎書店から出版を予定しています!
――最後に、受賞を目指す受講生へアドバイスをお願いします。
木内さん 私の受賞の経緯と照らし合わせても、作品を丁寧に推敲して完成度を高めることが、「受賞への近道」と言えると思います。私は家族や友人に読んでもらって、「山場が足りない」、「このシーンがもっとほしい」など客観的な意見を聞きました。自分が納得した意見だけ参考にして、クイズの正解を考えるみたいに、面白がって直すようにしていましたね。一つの作品に固執するっていうことではないのですが。たくさん書いて直して、いろんな作品を見て勉強する、そんな修行期間を大切に楽しむことも大事だと思います。
木内南緒さんが受講したのは…… 
童話・児童文学添削

童話や児童文学を執筆するプロの作家が講師となり、作品を添削、講評します!
地方にいてもプロの作家の先生に作品を読んでいただけるというのがよかったです。メッセージ(講評)をたくさん書いてくださって、「こんなに書いてもらえるんだ、すごい!」と思いました。内容も「がんばりなさい!」というエールのように感じて、作品を書くこと自体にも力が湧きました。モチベーションを上げるために公募スクールを活用するのは、とてもいいと思います!
 

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