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現役作家に聞く! 面白い小説を書くコツ(前編)

赤神諒

小説家、私立大学教員、法学博士、弁護士。

2017年、『大友二階崩れ』で第9回日経小説大賞を受賞しデビュー。

著書に『大友の聖将』『戦神』『空貝 村上水軍の神姫』などがある。

最新作は『太陽の門』。

現役作家であり、大学教員、弁護士でもある赤神諒さん。様々な経歴をお持ちの赤神さんに、デビューに至るまでのエピソードや、キャラクターの作り方、ネタ集めの方法など、いろいろなお話を伺いました。 前編となる今回は、赤神さんがデビューに至るまでのエピソードをご紹介します。


自分には無理だと決めつけていた

――― いつ頃から作家になりたいと思っていたのですか?

(赤神諒 さん、以下赤神さん) 
実は幼稚園のころから、物語を作ってそれに絵を描いていました。祖父は英文学者で、家に本がたくさんあったので、英文学やロシア文学を読んでいましたね。また、叔母がBBCで放送していたシェイクスピア劇場の演劇を録画していたので、それを観ていました。説明として書かれただけの文章を読むのは損で、文学以外は読む意味がないと、ずっと思っていました。(笑)


——大人になってからは弁護士の道に進まれていますね。

(赤神さん)
たくさん読むうちに、こんなにすごい作品を書く人がいっぱいいるんだから、自分には無理だと、勝手にガラスの天井を作っていた。それでも本は好きで、大学進学の際は文学者になりシェイクスピアを専門にしたいと思ったんです。しかし、彼に関する論文は世界で年間1万本以上発表される。社会にコミットせず、それだけを専門としてやっていくのはどうかと。その反動から社会に関わろう、法を学ぼうとなった。やるならば一番難しい司法試験に挑戦したくて、弁護士の道へと進んだのです。


——以降は、弁護士のお仕事をメインでやってこられた。

(赤神さん)
当時は、一流の弁護士になろうと、刑事事件や民事事件、なんでもやりました。しかし、途中で環境問題が一番深刻だと思い、環境法と行政法を勉強し始めたんです。そこから環境問題をずっとやっていたのですが、司法改革の時期で行政事件訴訟法の改正を40年ぶりにやるという動きがあった。滅多にないチャンスなので、10年ほど勉強して真剣に取り組んで第一次改正は成功したのですが、第二次改正には結局、失敗した。そこで、燃え尽き症候群になってしまったんです。


——その後、大学教員になられたのですね。

(赤神さん)
法改正からは離れ、自由な時間が多い大学教員もやり、二足の草鞋を履き始めました。弁護士も法律相談などの裏方に回るようになったので、空いた時間で小説を書き始めたんです。




燃え尽きた後、再び作家を目指して

——どうしてプロの作家を目指そうと?

(赤神さん)
読書は好きで続けていたわけですが、あるとき、大ヒットした話題作を読んでみたら、これなら俺でも書けるんじゃないかと。(笑)じゃあ書いてみようと思い、それから現代物と歴史物を半々で書くようになりました。


——独学で書き始めたのですか?

(赤神さん)
僕はデビューまで7年半かかっているのですが、その間基本は自分で勉強しながら、若桜木虔先生の通信講座、山村正夫記念小説講座、東京作家大学に通いました。プロの知識は大事ですし、一人の作家だけから学ぶより、複数の意見を聞きたいと思ったからです。実際、とても役立ったと思います。


——その後、どんなコンクールに応募し始めたのですか?

(赤神さん)
松本清張賞、小説すばる新人賞、野性時代フロンティア文学賞、小説現代長編新人賞などです。年に3本の新作をぶつけ、落とされた自信作を別の賞に出したりしながら、年4、5本は出していました。デビューまで長編で17本は書いて応募しています。




落選作はデビュー後のためのストック

——7年半の中で挫折はなかったですか?

(赤神さん)
なかったですね。応募するひと月前には、次の新作を書き始めていた。ノルマを決めて毎日書き続けていたんです。だから落ちるとへこむけど、持ち球がつねにあるわけです。
また、受賞する4年くらい前から自分はプロレベルだと思っていた。僕にとってのプロとは、最後まで読み通せる面白さが作品にあるかどうかです。小説以外にもエンタメはたくさんあるので、読みたくなくなったら負け。だから、自分はそのレベルに達しているのに何で通らないのか不思議だった。落選作は受賞するまでのストックとしてたまればいいやと思っていました。(笑)


——『大友二階崩れ』で日経小説大賞を受賞後、すぐ次の仕事につながりましたか?

(赤神さん)
ストックがたくさんあるので、小説教室で出版社を紹介してもらい、担当者に手紙を書いて売り込んだら、書籍化してもらえました。売り込むうちにすぐ10社くらいから、うちで書いてと言われましたね。実は、過去の落選作はたくさん書籍化されています。 だから、落ちたら別の公募に出してもダメと言う人がいますが、人それぞれだと思いますね。どんな下読みや審査員が読むのかにもよるし、タイミングもあると思います。

第9回日経小説大賞受賞作!
『大友二階崩れ』
(講談社 680円+税)

戦国大名・大友氏のお家騒動を、
義を貫く家臣・吉弘鑑理の視点から 描いた本格歴史小説!


後編では、赤神先生流の「面白い小説を書くコツ」と、赤神先生が講師を務める9月開講のオンライン講座の情報をお伺いします!

後編はこちらから

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取材

岡田千重
フリーランス・ライター。広告物の企画・ライティングの経験を経て、2003年より映像系クリエイターにインタビューをするようになる。現在は月刊公募ガイドでも作家のインタビューを手掛ける。2012年、1000字シナリオコンテスト最優秀賞受賞。2013年度より、シナリオ・センターにて講師およびシナリオ添削を担当。公募スクールではライティングやエッセイの講座を担当。

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