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素直さはデビューへの近道

もえぎ桃

1970年生まれ。フリーライターとして働くかたわら、7年間にわたり児童文庫小説賞に挑戦し続けた。2020年、第3回青い鳥文庫小説賞で金賞を受賞し作家デビュー。

公募スクールの「児童文学」を受講後に第3回青い鳥文庫小説賞で金賞を受賞し、作家デビューしたもえぎ桃さん。
児童文庫小説でデビューするまでの試行錯誤や、公募スクールの受講体験、デビュー後の挑戦など、いろいろなお話を聞きました!

試行錯誤の末 たどり着いたデビュー作

もともとフリーライターとしてお仕事をされていたそうですが、児童文庫小説を書き始めたきっかけは何ですか?

もえぎ 桃さん(以下もえぎさん)
子どもが小学校1年生くらいのときに、児童文庫小説にはまっていたんです。それを見て「こういう子供向けの本なら書けるんじゃないかな」と考え始めたのがきっかけです。

小説を書こうと思ったのは、児童文庫小説が最初だったのですか?

もえぎさん
それまでもエッセーやショートショートなどの小さな賞に応募していて、入賞した経験もあります。一度だけミステリー系の大きい賞に応募して落ちています。笑 
児童文庫小説も、最初はホラーとかコメディとか、男の子向けのものを書いたりしていたんですけど、それがコンテストに落ちまくっていて。方向性を変えようと思って試行錯誤の末に書いたのがデビュー作の、胸キュンな恋愛ものでしたね。



第3回青い鳥文庫小説賞 金賞受賞作!
『両想いになりたい』
(講談社青い鳥文庫・680円+税)

中学生でプロのイラストレーターのスピカ。
親友の那由多に恋をしている。
しかし那由多は違う女の子の生徒会選挙の推薦人になるって言い出して……。生徒会を舞台にした胸キュン恋愛小説!

児童文庫小説は小学生、中学生が主なターゲットになると思いますが、執筆の際に気を付けていることはありますか?

もえぎさん
私の場合はですけど、設定はあまり捻りすぎないようにしています。恋愛ものに限って言えば、王道の方が読んでもらえるのかなと。だからネタというよりは、展開の面白さを大切にしています。

キャラクターはどのように作っていますか?

もえぎさん
キャラクター設定も同じで、捻りすぎないこと。「まっすぐで明るくて元気で」とか「やさしくて正義感が強くて」っていう捻らないキャラクターは、一般文芸ではあまりウケないんですけど、児童文庫だと逆にそういう子が受け入れられる。でもそれは児童文庫を書いている人でないとわからないと思います。
昔、作品の中で、「言い方がきつい先生」を出したことがあるんですが、小学生が読むと怖くなっちゃうみたいで。読後の感想が、ストーリーの内容よりも「先生にこんな言い方されたら怖い」になってしまいました。なので、マイナスイメージのものはあえて大きく書かないようにしています。

ライターとして書く記事と、児童文庫小説として書く文章は、雰囲気がガラッと変わりますよね。戸惑いや抵抗のようなものはありましたか?

もえぎさん
そんなプライドのようなものは全部捨ててきました。笑
私は自己表現で小説を書くとかではなく、本当に受賞してデビューしたかったんですよ。なので、実際に児童文庫小説を読んで、文体を研究しましたね。そうしていく中で、だんだん自分なりの児童文庫小説の文体ができたかなとは思います。

メリットはズバリ「プロの意見」 ―公募スクール受講体験談―

公募スクールの個別添削講座を受講されたことがあるんですよね。受講された講座と、受講のきっかけを教えてください。

もえぎさん
後藤みわこ先生の「児童文学」を受講しました。もともとは月刊公募ガイドの「TO-BE工房」に作品を応募していて。「TO-BE工房」には応募作品を添削してくれるサービスがあるので、それで2回ほど添削してもらいました。でも一般小説と児童文庫は全然違うので、児童文庫をわかっている人に見てもらいたいなと思って。

実際に添削を受けて、よかった点はなんですか?

もえぎさん
設定が甘いところや、書き手だけがわかっている作品の世界観というのは、誰かに見てもらって指摘してもらわないと違和感を持たないので、そういう指摘をもらえるのはすごくよかったです。
後藤先生の添削には、キャラでも設定でも、「なぜこのキャラクターをこういう設定にしたのか、という必然性のようなものがないと、読者にはなかなか伝わらないと思います」というコメントが書かれていて、その通りだなと思いました。小説賞の審査員やデビュー後の編集者からも同じことを言われましたね。

読者にきちんと伝わっているのか、書いている本人ではわからない部分はありますよね。

もえぎさん
受賞までいかなかったときは、そこが大きかったと思うんです。書き手の中で作り上げられている世界観が読み手に伝わっていないっていう。
添削は、やっぱりプロに見てもらわないと、必要な意見はもらえないんじゃないかと思います。特に児童文庫と一般文芸は本当に違うので。そういう点で、プロの意見を聞くというのは受賞への近道になると思います。

青い鳥文庫小説賞で受賞されたことに、後藤先生の添削は役に立ちましたか?

もえぎさん
すごく役にたちました!最初はこだわりがあるので、書きたいように書いちゃったりするんですけど、そこは読者に合わせてストライクゾーンに投げないと受け取ってもらえないなと。
過去に後藤先生の個別添削を2回受けていますが、アドバイスに沿って手直ししたものが、角川つばさ文庫の最終選考に残ったりしました。添削で指摘されていた部分を一部クリアできないまま送ったからか、受賞まではいきませんでしたが。後藤先生すごいな、と思います。



後藤先生に添削してもらった原稿は今でも持っているそう。

もえぎさん
「後藤先生は褒めてくれるんです。褒めたうえで、『こういうところはどうでしょうか』というアドバイスをくれるので、落ち込んでいて励ましてもらいたいときには読み返します。笑」

<後藤みわこ先生に聞きました>
Q.添削をされたときの、もえぎ桃さんの印象を教えてください。

後藤みわこ先生
とにかく、作品自体にとても「勢い」を感じる書き手さんで、すごいパワーだな、と思っていました。
「エンタメの人だわ」と思った、といえばいいでしょうか……。うまく言えませんが、印象深くて。
児童文庫の選考経過で、お名前を見つけたこともありますよ。その後、児童文庫でデビューされて、大納得! でした。

作家デビューはスタートライン

次の作品のご予定は?

もえぎさん
11月に『うるわしの宵の月』という漫画のノベライズをやらせていただくことになりました。 12月には自身オリジナルの新シリーズ作品が出版されます。

漫画のノベライズも書かれているのですね。漫画は絵だけで表現する部分も多いですが、小説はそれをすべて文字で描写しなければならない難しさがありますよね。悩んだりしませんでしたか?

もえぎさん
吐きそうでした。笑 
やってみたらこんなに難しいのかと。漫画はすごく面白いのに、画面上のことをただ描写しても面白くもなんともないんですよ。キャラクターが心の中で突っ込みを入れる描写などを入れていったら、ようやく小説として面白くなってきて。キャラクターの気持ちになりきって書き上げたので、思い入れの深い作品です。

<もえぎ桃さんのノベライズ作品>
2021年11月新刊!『うるわしの宵の月』
(やまもり三香/原作 もえぎ桃/文 講談社青い鳥文庫)

滝口宵は、容姿端麗ゆえに、周りに「王子」と呼ばれている。女子から憧れの相手として扱われる日常に複雑な思いを抱いている中、偶然が重なり、同じく 「王子」と呼ばれる一つ上の先輩、市村琥珀と急接近! 「王子」同士の、不器用なラブストーリー!

<もえぎ桃さんのオリジナル新シリーズ>
2021年12月新刊!『ふたごに溺愛されています!!』

青い鳥史上いちばん溺愛されちゃうヒロイン登場!

今後はどんなものを書かれる予定ですか?

もえぎさん
今は一般文芸に挑戦しています。まだ公募をやっているんです。笑  もともとホラーが好きで、自分でも読んだり書いたりしていたので、ホラーでまた大きな賞を狙いたいな、と思っています。

今もいろいろなことに挑戦されているんですね。

もえぎさん
小説家になったら「印税御殿!」みたいな、すぐに儲けられるイメージがあったんですけど、そんなことはありませんでした。笑  デビューはゴールではなかったですね。スタートラインに立った感じです。年齢的にかなり出遅れてるので、これからですね。

最後に、公募スクールで学ばれている方にアドバイスをお願いします。

もえぎさん
素直に聞く、ということが大切だと思います。それが本当に正しいかどうかはわからないですけど、とにかく先生の言うことを素直に聞いて、チャレンジしてみる。
私も当時は後藤先生のアドバイスを実践できていない部分がちょっとあって、もっと素直に聞いていればよかったなと改めて思いました。まずはアドバイス通り、やってみる。それがデビューへの近道じゃないかな、と思います。