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「プロットって本当に必要なの?」藤咲あゆな先生に聞いてみた! 「プロットって本当に必要なの?」藤咲あゆな先生に聞いてみた!

「プロットって本当に必要なの?」
藤咲あゆな先生に聞いてみた!

2021.04.09
受講生から「プロットをつくらない作家もいると聞いたのですが、本当に必要なのでしょうか?」と質問が寄せられました。今回は大人気シリーズを次々と刊行している藤咲あゆな先生に、この疑問について伺います。
藤咲あゆな先生

小説家、脚本家。小説では児童書、ライトノベル、漫画ノベライズ、脚本ではテレビドラマ、アニメ、ドラマCD、漫画原作など、多岐にわたって活躍中。『戦国姫』シリーズ、『天国の犬ものがたり』シリーズなど著書多数。

 

プロットなしで執筆するのは、地図なしで観光旅行に行くようなもの
――いきなり本題に入りますが、小説を書くときにプロットは必要なのでしょうか?
藤咲先生
書く前に物語を組み立てないと破綻してしまうことが多いので、必要だと思います。プロットをつくらないと言っている人たちも、結局、頭の中にプロットのようなものがあるんじゃないでしょうか。
――藤咲先生は書きはじめた頃からプロットをつくっていたのですか?
藤咲先生
私は最初、プロットのつくり方を知らずに新人賞に応募して、佳作を獲ったんですよね。その後も応募を続けたのですが、二次か三次通過止まりで。プロットがないから、ワープロに向かってああだこうだと、めちゃくちゃ逡巡しながらつくりあげていました。書きたいシーンのつなげ方や、物語のうねりをつくる技術をまだわかっていなくて。だから学校で勉強しようと思って、日本脚本家連盟のライターズスクールに入りました。そこで初めてプロットを教えてもらったんです。ゼミでは毎週プロットの課題が出たので、かなり鍛えられましたね。
――プロットを教わってからはどうでしたか?
藤咲先生
飛躍的に作品づくりが早くなりました。今考えると、プロットなしで執筆するのは地図なしで観光旅行に行くようなものだったと思います。地図がないと目的地へ最短ルートで歩けないですよね。何より、物語の展開も回りくどくなって読者が読みにくいものになってしまいます。でも、プロットがあれば執筆時間の短縮にもなるし、無駄も省けます。
――地図がないと迷走してしまいますよね。
藤咲先生
私の友だちにも、書き出したはいいものの、行ったり来たりして全然書き終わらない人がいて。「ああ、プロットがないからいつまでも書きあがらないんだな」と気づいたんですよ。
プロの世界ではプロット必須
――執筆するにあたってプロットはやはり大事なんですね。
藤咲先生
はい。執筆の都合だけではなく、プロとして小説や脚本を書くときはプロットが必須になります。プロットがそのまま編集会議にかけられるので。いわゆる企画書みたいなものですね。それを読むだけで作品の概要がわかるように、タイトルと自分の名前、企画意図、主要な登場人物、あらすじを入れます。歴史ものだったら大まかな史実も情報として載せてわかりやすくつくります。
――脚本を書くときもプロットが必須?
藤咲先生
そうですね。アニメの脚本などはプロットがかなり重要になってきます。アニメは分数が決まっているので、原作どおりにはつくれないところがどうしても出てきてしまいます。だから、原作をどういうふうに変えるのかをプロットに書いておきます。それをもとに話し合いを行うので、最初にしっかりプロットにしておかないとたくさんの人が出席する会議の時間が無駄になっちゃいます。それでも会議に8時間も12時間もかかることもあるし……。
――そんなに時間をかけて話し合うんですね!
藤咲先生
それだけ話し合っても、実際に絵コンテに起こしてみると「このシーンとこのシーンは入れ替えた方がいいんじゃないか」といったことが出てきたりします。やっぱり脚本は生き物なんですよね。皆さんは30分のアニメを「短いな」と思って見ていると思うけれど、あの30分にはいろんな苦労が詰まっている。1回分の放送の脚本が決定稿になるまで1~2ヶ月くらいかかるし、アニメづくりはその後も作画をしたり、声を当てたり、たくさんの工程があるんですよ。脚本が仕上がらないと、そのあとの制作が圧迫されてしまうので、脚本づくりであまり時間をかけてはいけないんです。だからプロの仕事として、最初にしっかりプロットをつくることは大事ですね。
まず、設定をまとめる力をつける
――先生はこれまでファンタジーを書かれることも多かったのではと思います。ファンタジーを書くときは特にプロットが大事なのでしょうか。
藤咲先生
独自の世界観をつくるので、大事だと思います。逆に、設定をつくりこみすぎて「設定病」に陥ってしまう人もいますね。講座の課題で「プロットはA4の紙2枚以内」と決めているのは、枚数を決めないとそぎ落とさずにどんどん膨らませてしまうからです。設定をまとめないと物語を最後まで書くのが難しくなります。だから、まずはこの課題でまとめる力をつけてほしいと思っています。
――他にプロットづくりで大事なことはなんですか?
藤咲先生
作品を通して何を伝えたいかを企画意図に書くのですが、デビューしたての頃、「伝えたいことは1行で書きなさい」と担当さんに言われたことがあるんです。これ、すごく難しいですよね。でも、たしかにそのとおりだなと思いました。伝えたいことをひとことで言えたらわかりやすいですよね。これはタイトルを付けるときも役立ちます。
――藤咲先生の「戦国姫」(集英社)というタイトルはとてもわかりやすいですよね。
藤咲先生
短いからロゴも大きくなるし、インパクトがあるし、言いやすい。戦国時代のお姫様だって一発でわかりますよね。何のひねりもないです(笑)。西郷隆盛のお話を書いたときはサブタイトルに「幕末維新の巨人」とつけました(『西郷隆盛-幕末維新の巨人-』ポプラ社)。西郷さんは背が高くて大きいということと、幕末から明治維新にかけて大きなことを成し遂げたということのダブルミーニングになっています。タイトルはやっぱり短くてわかりやすい方がいいと思いますよ。

『戦国姫-武田の姫君たち-』
(集英社・680円+税)

武田三代を支えた5人の姫君たちの物語。本作はシリーズ17巻目。

プロットよりもキャラクターが大事!?
――昨年全30巻で完結した『魔天使マテリアル』(ポプラ社)という作品がありますよね。これだけ長い作品のプロットはどうやってつくっていたんですか?
藤咲先生
もちろん、1巻ごとにプロットはつくっています。30巻分の内容のすべてを最初から全部考えていたわけではないです。どうエンディングを迎えるか、というイメージはありましたけど……。物語はキャラクターありきなので、キャラクターがしっかりしていればいくらでも話は転がるものです。書いているうちに自分でも思わぬ方向に行くこともあります。
――プロットがあってもキャラクターに合わせてプロットを変更されるのですね。
藤咲先生
プロットはあくまでガイドラインなので。でも、プロットで話の大筋を最初に決めているから物語はそんなにぶれませんね。展開を事細かに決めていなくても、イメージがしっかりあればそういうふうに進んでいくんだなというのは経験上あります。
――プロットに合わせてキャラクターに行動させようと考える方もいらっしゃると思うのですが。
藤咲先生
プロットに書いたから、こうあるべき、とガチガチに固めてしまってはダメですね。キャラクターの個性が死んじゃう。やっぱり、キャラクターが生き生きと動いていないと。
――プロットは大事だけど、書き進めるうえではあくまでガイドライン。物語において一番大事なのはキャラクターが生きていることなのですね。本日はありがとうございました。


プロットのつくり方を学びたいあなたは… 
ストーリーの組み立て方入門講座 > 
講師:藤咲あゆな

ストーリーを新しく見せるコツや、よりおもしろくするための構成の仕方を伝授。ストーリーが浮かばない、おもしろい展開にならないという方にオススメです。シナリオや漫画原作を書きたいという方にも役立ちます。

第3回目の課題の「逆プロット」は私のオリジナルです! いきなり何もないところからプロットをつくるのは難しいので、まずは映画を見て、自分が作者だと思ってプロットをつくるという課題を出しています。大事な場面や重要なキャラクターを考える練習になるんですよ。最後の課題ではオリジナルのプロットをつくってもらいます!