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公募ガイドを活用し、書くことをルーティーンにしよう ―― 先生はどんな人? 第3回 柏田道夫先生 公募ガイドを活用し、書くことをルーティーンにしよう ―― 先生はどんな人? 第3回 柏田道夫先生

公募ガイドを活用し、書くことをルーティーンにしよう
―― 先生はどんな人? 第3回 柏田道夫先生    

2021.05.10
講評や添削のやりとりだけではわからない、講師の素顔に迫ります。今回は柏田道夫先生にインタビュー。シナリオと小説の両方を書くようになったきっかけや、ミステリーを書く力の鍛え方などを伺いました!

自分の得意分野は何かを考えた
――柏田先生は「エンターテインメント小説講座」やミステリー、歴史・時代小説の添削以外にも、『月刊公募ガイド』では600字のシナリオや小説を誌上添削する「実践シナリオ・小説教室」を2015年まで連載されていました。作家の湊かなえさんも採用されていますね。
柏田先生
湊さんは2回優秀賞を獲っていますね。当時「実践シナリオ・小説教室」以外にも、川柳に始まり、ラジオやテレビのドラマなどいろんな公募に出されていました。彼女はテレビドラマの脚本の賞を獲ったんですが、プロデューサーに「脚本家という仕事は東京に住んでいないと難しい」と言われたそうです。そこで、一念発起して書いた小説『聖職者』で小説推理新人賞を受賞し、翌年『告白』でデビューされました。今や編集者が、彼女の住む淡路島までわざわざ出向くほどの人気作家ですね。
2009年10月号でおこなった、湊かなえさん
と柏田道夫先生の対談記事
 
――先生はシナリオも小説も書かれますが、どういう経緯で両方書くようになられたのですか?
柏田先生
20代半ばからシナリオ・センターという学校でシナリオを勉強しながらコンクールにも出しはじめたんですが、あまりうまくいかなかった。それがあるとき、映像企画のコンペで私の企画が最終まで残ったんです。でも結局、映像化には至らず、脚本の一部だけ使わせてほしいと言われた。それは嫌だったので、このアイデアは小説にするから駄目ですと断りました。そういった手前、形にしなければと思って実際に400枚の小説にして講談社時代小説大賞に応募したら、最終の3本に残ったんです。「賞金1000万円がもらえる!」と思ったけれど落ちて……。審査員の平岩弓枝さんに「小説になっていない。シナリオのト書みたいだ」と酷評された。そこで、ちゃんと勉強しなきゃダメだと思い、朝日カルチャースクールの小説講座で勉強しはじめました。
――それから小説の公募に?
柏田先生
はい。まず現代物のミステリーでオール讀物推理小説新人賞に応募したら、最終に残ったんですが落ちてしまった。そのときに受賞した伊野上裕伸さんの『保険調査員 赤い血の流れの果て』は井上さんの実体験をもとに書かれていて、とてもリアルだったんですね。じゃあ私の専門は何だろうと考えると、今まで広く浅くやってきたから深く掘り下げるものがなかった。でも、あえていうなら時代小説が好きでたくさん読んでいたから、なんとか書けるんじゃないかと思った。それで次のオール讀物への応募は時代物のミステリーに絞り、半年かけて書いた『二万三千日の幽霊』で受賞しました。また同時期に書いていた『桃鬼城伝奇』でも歴史群像大賞を受賞し、以降は『武士の料理帖』や『武士の家計簿』といった、小説・映画の時代物を書かせてもらうようになりました。
ミステリーが書けると武器になる
――小説講座の添削をされていて、提出作品に見られる特徴はありますか?
柏田先生
ミステリーとしての辻褄があっていない。作中の犯罪は本当にありえるか、動機やトリックも含めたリアリティに欠ける作品が結構あります。ここがしっかりしていないと公募に出しても審査員が点数を引く。私も小説講座で教わったのですが「あなた自身が犯人になったつもりになって、その犯罪をやるかどうか」と詰めて考えることが大事です。
――ミステリーや時代物を書くとなると、一般文芸よりハードルが高い印象があります。
柏田先生
でも、その分書けると武器になる。文芸物だと誰でも書ける気がして応募総数が多いけれど、ミステリーや時代物なら数が絞られる。また、ミステリーとひと言で言ってもいろんなジャンルがあり、本格的なトリックだけではなく「日常の謎」というのもあります。夫が浮気しているみたいだから調べてみたら誤解だった、というのも一つの謎。ミステリーに限らず、普通の小説でも秘密や謎を投入するとドラマがぐんと面白くなりますよ。
――ミステリーを書く力を鍛えるにはどうしたらいいですか?
柏田先生
ミステリーの場合、ある程度は類似の作品をチェックして読み、いろんな角度から検証することが必要です。添削作品全般に言えるのですが、あまり小説を読んでいないのがわかる。小説を書く上で、過去の名作にはどんなトリックが使われているのかわかるくらいの素養があるほうがいいし、ある程度の読書量は必要です。
――読み方にコツはあるのでしょうか?
柏田先生
古典でも最近流行りの小説でもいいけれど、盗むつもりで読んでほしい。その作家がどういうふうに話を組み立て、どういうキャラクターでどんな伏線を張っているのか。これを意識して読むかどうかで全然違います。
――先生は『ミステリーの書き方』という本も出されていますね。
柏田先生
ミステリーの各ジャンルの説明、アイデアの組み立て方、物語の型、キャラクターの作り方など、初心者も読めるように書いています。また、いろんなジャンルの代表的な小説や映画も紹介していますから、気になった作品を読んでもらうとミステリーの素地ができると思います。

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――どのくらい書けばプロになれると思いますか?
柏田先生
今はパソコンがあるし、SNSやネットもあるから書くことのハードルが下がっている。でも、プロになるには顔の見えない読者に本を買ってもらわないといけない。そのためには最低でも5年計画のつもりで勉強をする。ひたすら読んで書いて、短編の習作をやる。そうすると見えてくると思います。
――おすすめの公募活用法はありますか?
柏田先生
出版社がやるようなメジャーなコンクールはなかなかハードルが高いので、地方自治体が主催している公募や、短編を募集している公募からやってみるといいですね。今教えているシナリオ学校の生徒には『公募ガイド』で阿刀田高さんが審査されている掌編小説コンテスト「TO-BE小説工房」への応募を薦めています。400字5枚なら毎月出せるはず。また、長編も年に1回くらい挑戦する。そうして短編と長編を組み合わせて書いていると、自分のペースがわかってきます。
――先生が添削で心掛けていることは?
柏田先生
人それぞれに必ずいいものを持っているので、そこを引き出せるようにしたい。長所を踏まえて、こうしたらいいんじゃないですかとアドバイスするようにしています。「エンターテインメント小説講座」は初心者の方でも最終的に形にできるようになりますよ。
――最後にメッセージをお願いします。
柏田先生
小説を書いても見返りがあるかわからないので、モチベーションの維持がつらいと思います。だけど、ずっと書いてると必ず上手くなる。そのためにも、公募に応募し続ける、通信の添削を受けてみるなどして、生活の中に小説を書くことをルーティーンとして入れていく。その方法の一つとして、公募ガイドを活用してほしいですね。
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