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公募スクール突撃インタビュー 絵本屋さんから見た絵本とは?

ニジノ絵本屋 いしい あや

「絵本の読み手と作り手をつなぐ架け橋」になることを目指し、2011年にオープンした絵本専門店。書店の他、絵本の企画編集や出版を行う。音楽を交えた絵本の読み聞かせライブを仲間のアーティスト達と手がけており、サマーソニックやhave A nice Festivalをはじめとした国内外のフェスにも出演。活動は多岐にわたる。書店/出版社経験ゼロで絵本屋をスタートしたエピソードをまとめたエッセイ『ニジノ絵本屋さんの本』(西日本出版社)も発売中。

「文字がわからなくても絵や色で楽しめる」、「読み聞かせでコミュニケーション機会が増える」、「読むだけでなく、作る楽しみもある」など、絵本には子供の頃は気づかなかった、でも大人になった今だからわかる魅力が溢れています。今回は、絵本専門店としてユニークな活動を展開しているニジノ絵本屋さん代表のいしいあやさんに、絵本づくりのこだわりについて聞いてみました。

作家さんとともに作りあげる


――― 昨年発売の『ちいさなみずたまり』が評判ですね。

(いしいあや さん、以下いしい)
『ちいさなみずたまり』(まつざわくみ/文、ノーム・コーン/絵)は、昨年、ニジノ絵本屋レーベルとして出版された絵本です。「人は誰しもが心にみずたまりを持っているのではないか」という作家さんの思いが、生まれたての小さなみずたまりとして表現されているんですが、ご縁あって当店から出版するに至りました。

『ちいさなみずたまり』特設サイトhttp://nijinoehonya.com/pub/little-puddle/

――― どんなところが他の出版社と違うのでしょうか。

(いしい)
息の長い絵本にするためには、予算や売れ行き的な見通しは当然重要なのですが、それだけではなく「まずは作家さんがこの絵本で何をやりたいのか」を大切にしています。作家さんの頭の中にある「ああしたい、こうしたい」に耳を傾け、なんとか形にする方法を一緒に考え、作品を作り上げることにこだわっています。
ほかの出版社さんでももちろん大切にされていることだと思いますが、ニジノ絵本屋の場合は少数部の発刊だったり、刊行のペースも早くないぶん、よりじっくりと作家さんの気持ちに向きあえているのかなと思います。


――― 『ちいさなみずたまり』でいえば、どのあたりがこだわりなのでしょうか。

(いしい)
谷川俊太郎さんによる寄稿詩、日英バイリンガル併記の他、気持ちが大きく動く部分を片側観音とびらで表現するなどこだわりポイントはたくさんあるのですが、作り手の目線で言えば装丁ですね。組み合わせると大きな水たまりになる「4種の表紙」やトランスペアレント用紙のページで始めることで朝靄のかかった朝の森を表現したりと、作品の世界観を表現するための工夫を随所に盛り込んでいます。

4種類の表紙パターン。組み合わせるとひとつのみずたまりが浮かび上がる
物語の導入をトランスペアレント用紙で表現し、読者が森の中に入るような世界を演出。

「つくるだけ」「売るだけ」ではなく「つくって届ける」


――― 「つくる」だけでなく、「届ける」ことにもこだわられていますね。


(いしい)
例えば、『LEMON TIME-檸檬とつなぐ毎日-』は、ターゲットを大人の女性に絞り込んだ絵本です。働く女性をお話の主人公にしているというだけでなく、絵本のサイズを縦横12cmにして鞄に入れてもかさばらないよう装丁を工夫したり。ふとどこかのページを開いてもその気持ちに寄りそえるような言葉があったり。絵本の中で届く故郷のレモンが実際に自宅に届くなど、絵本を手にとるシチュエーションや物語りを飛び出した現実世界とのリンクを意識するなど、絵本が届けられた先までをイメージした活動を行っています。

『LEMON TIME-檸檬とつなぐ毎日-』
『LEMON TIME』在宅ワークで働く女性に、ある日、故郷から山盛りのレモンが届く… https://nijinoehonya.studio.site/lemontime#lt_top



――― 絵本の総合プロデュースという感じでしょうか。


(いしい)
そういう言い方もできるかもしれないですね。『LEMON TIME』も前作『COFFEE TIME』の続編ですし、その間には『エピソード1.5』というショートストーリーも挟まれています。それぞれが絵本だけで完結しておらず、かつ時系列での連携もしているという点では、単なる読み物としての絵本ではないですね。絵本を起点として、読み手の日常生活にちょっとした癒しを与えられたらと考えています。

後日、自宅に愛媛産レモンが届くという仕掛け(完売済み)

最後に絵本をつくってみたいという方にメッセージをお願いします。


(いしい)
絵本を作る動機は、人それぞれ。作家さんが集まるマーケットや展示会などの場で人に見てもらいたい人もいれば、コンペで入賞したいという人もいます。ただ、創作活動である以上、生みの苦しみという壁にぶちあたり、作り続けることが辛くなってしまうことがあるのもまた事実です。そんなときはいったん立ち止まって、「こうしなきゃいけない」というところから、離れてみてもいいのではと思います。今はSNSなどで作る過程そのものを発表するやり方などもありますし。「絵本作家になりたい」、「今ある原作を形にしたい」、「とにかく一冊つくりたい」など、それぞれの作る段階で自問自答してみて、「自分はこの作品をどうしたいのか」を見つめ直すといいのかなと思います。

〈 取材を終えて 〉
絵本や作家さんと並走しながら世の中に届けていくニジノ絵本屋さん。絵本が出来上がった後を想像し自問自答しながら作るというお言葉は、絵本を作り進める上での糧になると思います。
みなさんもこの機会に自由な気持ちで絵本と接してみるのはいかがでしょうか。

ニジノ絵本屋
都立大学駅から徒歩5分の可愛いお店。
オンラインショップも運営している。
https://nijinoehonya.com/about

Instagram:https://www.instagram.com/nijinoehonya/
Twitter:https://twitter.com/nijinoehonya

最近ニジノ絵本屋さんが発信している絵本×俳句の小さなクリエイティブなアクション!絵本×俳句「はぐくみ句」:https://note.com/nijinoehonya/n/n107105f92564


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