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小説の「視点」

イラスト/フクイサチヨ

初心者がつまずきやすいのが、
小説の「視点」
今回は「視点」について一緒に学んでいこう。

全知視点と人物視点がある。全知視点は作者の視点で、初心者が使うのは難しい。人物視点は、語り手が登場人物の知覚を借りる方法だ。多数の人物に視点が変わる多元視点と、一人の視点を貫く一元視点がある。

初心者は一元視点で書こう。一元視点は登場人物と同じ視点で世界を見るため、情景の描写がしやすくなる。また、読者は登場人物に感情移入できる。一方で視点となる人物の知らないことは書けなくなる。

初心者はやりがち

一元視点ブレ

公募スクールの添削の中でも、特に指摘が多いのが一元視点からのブレ。
主人公・カナの視点で進む文章を例に、視点のブレを3つ紹介する。

 

《例文》

カナは慌てて家を飛び出した。寄り道をしたせいで、塾へ行くのが遅くなってしまった。5分後にリョウが小学校から帰ってきて、コウスケの家に遊びに行った。

《解説》

カナの視点なのに、急に別の場所にいる登場人物の行動が書かれている。カナの視点に全知視点が混ざった状態だ。一元視点では「主人公が知らないことは書けない」を徹底しよう。

 

《例文》

カナが公園に着くと、ユウタの姿はない。また寝坊をしたんだろうと、すぐにユウタに電話をかけた。ユウタが道を急いでいると目の前で杖をついた男性が倒れた。ユウタは男性に駆け寄った。

《解説》

前半はカナ視点。後半はユウタ視点になっている。カナの視点で後半も読み進めると、突然、目の前にユウタと杖をついた男性が現れたかのようだ。このような急な視点の切り替えは、特に書き慣れていない初心者に多い。読者は混乱してしまうので、充分気をつけよう。

 

《例文》

試合が終わった。カナはコートの中のシオリを見た。シオリは、選手生活に悔いはないと思っていた。

《解説》

この文章だとカナはシオリの姿だけでなく、心の中まで見えるということになってしまう。「試合には負けてしまったが、シオリの顔は晴れやかだった」など、カナの知覚でわかることを使って表現しよう。

 
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