

- コラム
ちょっとした疑問を解消!小説執筆Q&A -上野歩先生編-
小説を書いているとき、ふと「これってどうしたらいいんだろう?」と疑問に思うことってありますよね。公募スクールにも、受講生からの質問やお悩みが数多く寄せられます。
そこで今回は、これまでに届いた質問の中から代表的なものをピックアップし、公募スクールの先生にご回答いただきます!
第二弾は、「はじめての小説講座」や「公募に勝つ!添削講座」を担当されている上野歩先生です。

上野歩
入門講座「はじめての小説講座」、個別指南講座「公募に勝つ!添削講座」講師
小説家。『恋人といっしょになるでしょう』で第7回小説すばる新人賞受賞。近著に『お菓子の船』『あなたの職場に斬り込みます!』『料理道具屋にようこそ』など。公式HP『上野亭かきあげ丼』・Twitter
一人称と三人称、どちらで書くべきか、選ぶポイントはありますか?
A. 自分との共通点が少ない人物を主人公にする場合は、三人称にします
上野歩先生(以下、上野先生)
僕についていうと若い女性を主人公(語り手)にするケースが多いです。その場合、三人称を選択します。なぜか? それは、筆者である僕が、若くもなく、女性でもないからです。一人称で若い女性の内面を描き尽くすというのは、正直なところ荷が重いです。そこで、理解できないところは逃げられる三人称を選択するわけです。
たしかに、自分と共通点がないとリアリティのある心理描写などは難しそうですね。そんな観点から人称を決める方法があるとは、意外でした!
自分の文章を読み直すのが苦手で、推敲に集中できません
A. 人の心を打つ小説を書きたいなら、丹念に推敲してください
上野先生
小説は本質的に抒情詩です。小説で人の心を打つことができるのは、出来事を伝えたり、風景を述べたりするその根底に、深い叙情が流れているからです。その抒情が希薄になると、単に事柄の報告だけになってしまいます。文字数が限られた小さな世界が力を得るのは、その一語、その一文が、丹念な推敲を経ているからです。
葉書やメールなどを送るときも、心ゆくまで推敲する癖をつけてください。助詞ひとつにも推敲を尽くしてください。幾度か書き直し、繰り返し声に出して推敲してください。
なるほど、「神は細部に宿る」ということでしょうか。確かに、たった一文字の助詞が違うだけで、文章が与える印象が変わることがあります。書いたら読み直す。大事な習慣ですね。
小説の終わり方をどうするか、どう展開したらいいか悩んでしまいます
A. まずは全体のプロットから考えてみましょう
上野先生
終わり方を考えるにあたって、全体のプロットの立て方について、解説しましょう。
まず、筋立てはシンプルなほうがいいです。物語の振り出しは、主人公もしくはそれに準ずる人に達成したい目標があります。物語の幕切れで、目標を達成できたら、それはハッピーエンドのストーリーになります。目標が達成できなければ、バッドエンドのストーリーです。
物語の振り出しに、主人公もしくはそれに準ずる人に失われているものがあって、それを取り戻すストーリーと置き換えてもいいです。例えは少し古いですが、失われているものが「男の誇り」であるとします。それを取り戻せたらハッピーエンド、取り戻すことができなければバッドエンドです。
物語の振り出し(起)と幕切れ(結)にサンドされる承と転にはテーマ性を盛り込むようにします。そして、このテーマこそが大事なのです。作品にどんなテーマを盛り込むか? これこそが作者の腕の見せどころでしょう。
振り出しで目標を設定し、決定したテーマで展開し、幕切れ(目標を達成できる or できない)に至る。これがプロットの立て方です。
最初にプロットを立てておけば、展開がわからなくなって終わり方に迷う、なんてことはなさそうですね。書き始める前にまず、大まかな設定を作っておきましょう。
掌編小説を書いているのですが、指定枚数以内にうまく収めることができません
A. 言葉の足し算、引き算をよく考えましょう
上野先生
掌編小説のような短文を書く秘訣は、削るところにあります。構成を変え、文章を彫琢(ちょうたく)させることで、作品は輝きを増します。 言いたいことを盛り込みすぎて情報過多になったり、逆に省略しすぎてどこか物足りなくなったり……そのような壁にぶつかることもあるかと思います。
まずは伝えたいことを絞り込む作業に慣れること。必要、不必要なものを取捨選択する、いわば言葉の足し算、引き算をよく考えることが必要です。その作業を進める中で、言葉の入れ替えや言い換えをします。
最初から指定枚数以内に収めるように書くのではなく、書き上げてから削ってもよいのですね。ここでも推敲が大事なポイントになりそうです。
素人とプロの作家さんの一番の違いはなんですか?
A. 文章を読者のために書いているのか、自分のために書いているのか、の違いです
上野先生
ずばり、その文章を読者のために書いているのか、自分のために書いているのか、の違いでしょうね。自分が好きなことを書いているのは、それは自分で自分に捧げる貢物をつくっている行為になります。
プロは想定読者をはっきりと持って文章を書きます。誰に向けて書くのか、それをはっきりと持つことがプロへの道です。
読む人をきちんと想定して書く。簡単なようですが素人にはなかなか難しいことです。そこがプロの作家さんとは大きく異なる点なのですね。
上野先生のご回答を読むと、プロットや推敲など、基本が大事なのだということがよくわかりますね。
いま公募スクールの講座を受講中で、「どうしたらいいのかわからず困っていることがある」という方は、一人で悩まずに担当の講師に質問してみてください。自分では思いつかないようなアドバイスがもらえるかもしれませんよ。