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先輩に続け! 受賞者インタビュー 第24回ちゅうでん児童文学賞 志津栄子さん

公募スクールの受講生から、コンテスト受賞の嬉しいご報告をいただきました!
今回のスクールマガジンでは、第24回ちゅうでん児童文学賞で大賞を受賞された志津栄子さんに、コンテストの受賞体験や公募スクールの受講体験をお伺いします。

志津栄子(しずえいこ) さん プロフィール

1961年岐阜県生まれ。
過去に公募スクールの個別添削講座「短編小説」や「童話・児童文学」を受講。執筆歴は3年。児童文学のほか、詩や恋愛小説も執筆。Amazonにて「きむさん」の名前で電子書籍を出している。

【第24回ちゅうでん児童文学賞 概要】
子どもたちの豊かな「学び」を応援したいという思いのもと、公益財団法人ちゅうでん教育振興財団が主催するコンテスト。「大賞の部」と、19歳以下が対象の「さくら賞の部」がある。大賞の部の大賞作品は単行本として出版予定。選考委員は斉藤洋、富安陽子、山極寿一。

「自分らしく生きること」がテーマ
-受賞作「雪の日にライオンを見に行く」について-

〈受賞作あらすじ〉
「雪の日にライオンを見に行く」
 大阪、天王寺動物園のライオンは、居心地の悪そうな顔をしている。雪なんか降ってどうするんだと途方に暮れていた。唯人にはそんなふうに見えた。
 小学5年生の唯人は自分に自信がなくて教室のすみにいるような子どもだった。頼りになるのは従兄の洋平だけ。中国残留邦人だったじいちゃん、唯人と母さんを残して中国に帰ってしまった父さん……。そんな唯人の前に現れた転校生のアズはクラスに馴染もうとしないで、トラブルばかり起こしている。
 まわりの人たちの思いに触れ、ささやかな一歩を踏み出そうとする唯人の物語。

――受賞されたときの率直なご感想を教えてください。

志津栄子さん(以下、志津さん)
 えっ、本当に私でいいの? と、今でも思っています。出版されたら、全国の図書館や学校などに配布されるとのこと、責任の重さにくらくらしています。


――児童文学を執筆しはじめたきっかけは?

志津さん
 長年、小学校の教師をしていましたが、そこで出会った子どもたちのことを物語にしたいと思い立ちました。


――受賞作は、どういったところから着想を得て書かれたのですか?

志津さん
 書くということは、私にとって、自分自身のさみしさ(のようなもの)と向かい合う孤独な時間です。動物園にいるライオンは雪が降ったらどんなだろうと想像しているうちに、「唯人」や「アズ」が心に浮かんできました。
 どこか不器用で、居心地の悪さを抱えている、そんな人たちの話を書こうと思いました。


――どのくらいの期間で執筆されたのでしょうか?

志津さん
 3年ほど前に、「雪の日のライオン」という詩を書いたところが始まりです。その後に短編作品(20枚くらい)として書き終えたつもりだったのですが、なぜだかいつも主人公「唯人」のことが気になって、少しずつ書き足して今に至っています。
 同時進行でいくつかの作品を書いているので、一つの作品にどれだけの時間をかけたかは、自分でもよくわかりません。


――作品の中で特にお気に入りのシーンを教えてください。

志津さん
 大阪天王寺動物園。ライオンと自分を重ねて「親友」と呼ぶアズ。唯人が「おれかて、ひとりぼっちやで」とつぶやくと、アズは目に涙を浮かべて……。そんな二人をやさしくあわく雪が包みます。物語のテーマとも繋がる場面です。
 また、私が好きな登場人物の一人に「洋平んちのおっちゃん」がいます。年末になると宝くじを爆買いして、いつもおばちゃんとけんかになります。たぶん当たらないことはわかっているのに、唯人の頭をくしゃっとなでて「アホウ、あてにしとけ」と言うシーン。いわゆる「ちょい役」ですが、憎めません。


――この作品を通して読者の皆さんに伝えたいことは何ですか?

志津さん
 私の作品はどれも自分らしく生きることの大切さ、難しさをテーマにしています。引っ込み思案の唯人がアズをかばおうとしたことで、少しずつ世界が広がって、一歩踏み出していく。そんなお話を書いてみたいと思いました。
 この作品は小学校高学年くらいの子どもに読んでもらえるように書きましたが、おとなの方にもぜひ読んでいただきたいです。登場人物の誰かと思いが重なったり、共感したり、いろいろなことを考えるきっかけになったりしたら嬉しいです。

<第24回ちゅうでん児童文学賞 贈呈式の様子>

コンテストに応募しはじめて3作目での受賞。
昨年、同コンテストで優秀賞を受賞し、今回は再チャレンジだったそう。



私を突き動かしているのは「覚悟」
-公募スクール受講体験談-

――過去に公募スクールの個別添削講座「児童文学」を受講されていますが、受講のきっかけは何ですか?

志津さん
 日本児童文学者協会の創作教室でお世話になった、後藤みわこ先生のお名前を見つけ、作品を読んでいただきたいと思ったからです。


――公募スクールの講座は役に立ちましたか?また、後藤みわこ先生の添削のどういったところがよかったですか?

志津さん
 大変役に立ちました。
 良かった点は、作品のよいところを見つけてほめてくださったこと。改稿すべき点を整理して分かりやすく示してくださり、やる気を引き出していただきました。また、お忙しい方なのに、原稿を送ってから戻って来るまでの時間がとても速いのです。その1カ月弱の間に、私は次の作品をなんとか形にしようと決めて、頑張ることができました。

〈後藤みわこ先生からお祝いのメッセージ〉
志津さんは熱心に書きつづけてこられた方です。何作か、読ませていただきました。
最初のころは、「この点は工夫してほしい」と講評に書いたことがあります。
でも、次第にそんなお願いは不要になり、志津さんの進化を感じました。
「とても好きです」とお伝えした作品もありました。
どの作品も、登場する子どもたちはまっすぐで、繊細で、読者が「わたしのようだ」と思ったり「クラスのあの子のようだ」と思ったりするようなリアルさがありました。
受賞作でもきっと、そんな子どもたちに出会えることでしょう。刊行が楽しみです。 ご受賞おめでとうございます!


――執筆するうえで、気をつけていることがあれば教えてください。

志津さん 
 ひとりよがりに書くのではなく、子どもの心に寄り添うということを考えるようにしています。子どもの気持ちを代弁するといったらおこがましいかもしれませんが、「あっ、これ私のことだ」「そうそう。ぼくはこんな気持ちだった」などと、読んでくれる子が感じてくれたら嬉しいです。


――今後はどういった作品をご執筆予定ですか?

志津さん
 今回の作品は主人公の祖父が中国残留邦人だったという設定ですが、私の身近なところにも、母親(父親)がフィリピンやカンボジア、ブラジルなどから来ている子がいます。学校では日本語を話すけど、家の中では親の母国語を使う洋平のような子は意外と多くいるのです。その子たちのことを物語に書くことで、読者の子どもたちに視野を広げてほしい、多くのことに気づき、考えてほしい、そんな願いをもって書いています。
 その他には、さまざまな悩みを抱え、まわりとの関係をうまくつくれないでいる子、親に逆らえず我慢をしている子、家庭環境で問題を抱えている子など…… 私の中にいる大勢の子どもたちと、あれこれ会話をしながら書いています。頭の中は、わちゃわちゃといつも賑やかです。
 生まれ育った環境は、子どもにはどうすることもできませんが、自分に正直に生きることで、ささやかな希望を見い出し、前を向くことができると、作品を通して伝えたいです。子どもたちへの応援歌のような作品を書くことができたらと思っています。


――最後に、公募スクールで創作を学んでいる皆さんに一言お願いいたします。

志津さん
 夢に向かって何かを始めるのに遅すぎるということはありません。私は50代後半になってから、一念発起して物書き修行を始めたのですが、今までの人生はこのことのためにあったのかもしれません。道の向こうで大きな誰かが手招きをしている。だからそこに行かなくちゃ……。才能などと言えるものは持ち合わせていませんが、私を突き動かしているのは「覚悟」でしょうか。
 書くことが好きなら、楽しいなら、とにかく書いて書いて書きまくることです。そして、誰かに作品を読んでもらったら、素直な気持ちで書き直すことも大切だと思います。


――以上、志津栄子さんへのインタビューでした。

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