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現役作家に聞く! 面白い小説を書くコツ(後編)

赤神諒

小説家、私立大学教員、法学博士、弁護士。

2017年、『大友二階崩れ』で第9回日経小説大賞を受賞しデビュー。

著書に『大友の聖将』『戦神』『空貝 村上水軍の神姫』などがある。

最新作は『太陽の門』。

現役作家であり、大学教員、弁護士でもある赤神諒さん。様々な経歴をお持ちの赤神さんに、デビューに至るまでのエピソードや、キャラクターの作り方、ネタ集めの方法など、いろいろなお話を伺いました。 後編となる今回は、赤神さん流の「面白い小説を書くコツ」をご紹介します。赤神さんが講師を務める9月開講のオンライン講座の情報も必見です!

前編はこちらから


衝撃的なエピソードを主人公にぶつける

―――『大友二階崩れ』『戦神』『空貝 村上水軍の神姫』など、先生の作品は、主人公が際立っていて魅力的ですね。

(赤神諒さん、以下赤神さん)
キャラクターはエピソードで立つんです。アニメなら、綾波レイを見ただけでその魅力が伝わるけれど、小説はそれができない。だから、いかに衝撃的なエピソードをぶつけるかが大事なんです。 僕の『戦神』という作品では、主人公・立花道雪を強烈な人物にしたかった。そこで、彼は母が切腹して死んだ体から取り上げられた。死んで鬼になった母から生まれたから人間ではないという設定にしたんです。僕の中で特にキャラクターの立った作品で、隠れた最高傑作だと思っています。


―――設定自体の面白さも大事ですね。

(赤神さん)
主人公がニュートラルな行動を取っていて物語が平和だと面白くないので、何か事件を起こして向きあわせる。そんなとき、一般人ならするはずのない行動をさせるとキャラが立つんです。たとえば『戦神』では、主人公が妻を焼き殺すというあり得ない行動を取ります。でも、そうなるよう状況や人物を設定する。いかに面白くするか、日々そればかり考えてます。


―――先生の作品は、冒頭にインパクトがありぐっと引き込まれます。かなり意識されていますか?

(赤神さん)
はじまりとクライマックスとラストは最後まで悩みますね。最初が面白くないと読むのが嫌になりますから。最初から決まるケースもあれば、最後まで悩むケースもあります。ハリウッドの常套手段ですが、最初に短めの衝撃的な事件を起こす、それが最後に効いてくるのが理想です。


―――推敲はどのようにされていますか?

(赤神さん)
僕はかなり削ります。はじめからではなく書けるところから書くタイプなので内容がダブるんです。500枚の作品なら700~800枚は書く。結局200枚以上は削っています。完成させるというのは削るということ。僕は1回だけしか出てこない無駄な人物は出さない。それならはじめから登場させない方法を考える。だから、完成稿になったらほぼ減らせないんです。


―――文体やバランスはどのように工夫されていますか?

(赤神さん)
基本原則として会話3割、地の文7割くらいが読みやすいバランスだと思っています。作家によっては2:8の人もいると思います。ジャンルや場面にもよりますが、僕はクライマックスの見せ場は会話を使うことが多い。ただ、会話を入れると展開が遅くなるので、読みやすい目安として意識しています。


―――ネタ集めのいい方法はありますか?

(赤神さん)
読書以外にも、人生のいろんな経験が発想の源になる。ある出張の帰り、雨上がりの空にちょうど頂点で半分に切れているでかい虹が出ていた。それを見て、こういう作品が書きたいと思ったんです。ドラマにするならば、最高潮で途切れてしまう究極の愛の形ではないかと想像した。そこから書いたのが、妻を焼き殺すという『戦神』のラストです。  どんな仕事をしてどこにいても、題材はある。僕は同僚で嫌いな奴も作品に出しますよ。社会や人と関わるうちは、どこからでもアイデアは取れると思います。


強烈な人物・立花道雪が主役
『戦神』
(角川春樹事務所 1980円税込)

大友の宿将、戸次鑑連(後の立花道雪)。
鬼と呼ばれた男の凄烈な運命と愛を描く 最高傑作。


具体的な事例で実践的に学ぶ
―公開講座「現役作家が教える!小説の書き方講座2021」について―

―――9月開講の公開講座「現役作家が教える! 小説の書き方講座2021」では、課題図書『空貝 村上水軍の神姫』を元に学んでいくスタイルですね。

(赤神さん)
事例なく抽象的に論ずることはできるんですが、法律と同じで、この作品ではどんな技術がどのように使われているかという具体例がないとわかりにくい。『空貝』は恋愛もので、エンタメに共通してよく使われる技術がたくさん出てくるからわかりやすいと思います。 
また、今回は翻案(リメイク)をテーマにお話ししようと思っています。歴史小説は史実を膨らませ翻案するのが基本。そしてそのエピソードは、そのままでは面白くないものが多いんです。だから、いかに面白く変えるかが大事。歴史小説に限らず、何十回と観た好きな映画やドラマがあれば、それを江戸時代に置き換えたり、令和にしたりしてみる。これは初心者におススメの勉強法です。


―――「面白くするためのコツ」が学べるのは、楽しみです。

(赤神さん)
『空貝』のベースとなった「鶴姫伝説」も、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』もそんなに面白いわけじゃない。だから、作品として膨らますにはマイナス100の状態から始めるのがいい。 恋愛ものなら、宿敵の娘を殺しに来た極悪人の男とその娘が恋に落ちるとか、絶対恋愛にならないはずの二人に恋愛を成立させる。いかにひねるか。つまらない作品と面白い作品はどう違うのか。原形をいかに面白くするのかというコツをたくさん伝えたい。


公開講座の課題図書
『空貝 村上水軍の戦姫』
(講談社 1700円+税)

女武将・鶴姫と仇敵・越智安成が
衝突しながらも惹かれあっていく様を描いた、
ドラマチックな「歴史恋愛小説」!


―――他にはどんな技術が学べますか?

(赤神さん)
小説を書く上での心構えやインナーマッスルの鍛え方をお伝えします。実は大事なのは書く筋肉だったりする。小説を書くための目的地を定め、書き上げ、小説の体をなす作品にまで仕上げる。文学賞なら最低でも一次は通れるようになる。講座を通して、「誰もがレベルを一つ上げられる」のではないかと思います。


―――最後に、読者にメッセージをお願いします。

公開講座では、同じく現役作家である藤岡陽子さんと一緒に質問をたくさん受けつけます。デビュー前、出るか出ないかわからない状態の中、一人で書くのは辛い行為です。この講座で悩みを解消するだけでも迷いが減り、一歩でもデビューに近づいてもらえるのではないかと思います。小説を書く上で必要な「気付き」を、二人から少なからずお渡しできると思います。


■ 赤神諒さんが講師を務める公開講座はこちら!

現役作家が教える!小説の書き方講座2021
9月開講のオンライン講座。現役作家の赤神諒さんと藤岡陽子さんが、ご自身の著書を通して小説の書き方のコツを教えます!


取材

岡田千重
フリーランス・ライター。広告物の企画・ライティングの経験を経て、2003年より映像系クリエイターにインタビューをするようになる。現在は月刊公募ガイドでも作家のインタビューを手掛ける。2012年、1000字シナリオコンテスト最優秀賞受賞。2013年度より、シナリオ・センターにて講師およびシナリオ添削を担当。公募スクールではライティングやエッセイの講座を担当。

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