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《オンライン講座実施レポート》現役作家が答える!小説の書き方Q&A(テクニック編)


9月~11月に実施されたオンライン講座「現役作家が教える!小説の書き方講座2021」。
講座の中では、講師を務めた藤岡陽子さん・赤神諒さんが、受講者の皆さんからの質問にたくさん答えてくれました!その一部を、「テクニック編」と「執筆スタイル編」に分けて特別にご紹介します。
今回は「テクニック編」として、小説執筆の技法に関する質問をピックアップしました。

「現役作家が教える!小説の書き方講座2021」とは・・・
現役作家として活躍中の藤岡陽子さん、赤神諒さんを講師にお迎えし、9月~11月に実施されたオンライン講座(全3回)。第1・2回ではお二人がそれぞれ、ご自身の著書をもとに小説の書き方をレクチャー。第3回では、受講者の皆さんから寄せられた質問やお悩みに、対談形式でご回答くださいました。

講師紹介

藤岡 陽子 さん

小説家、看護師。 2006年「結い言」で北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。著書に『メイド・イン京都』(2021年京都本大賞 受賞)、『金の角持つ子どもたち』などがある。

赤神 諒 さん

小説家、私立大学教員、法学博士、弁護士。2017年、『大友二階崩れ』で第9回日経小説大賞を受賞しデビュー。 著書に『大友の聖将』『戦神』『空貝 村上水軍の神姫』などがある。最新作は『太陽の門』。

執筆のテクニックに関するQ & A

Q.1 文章の練習方法で、うまい作家の文章を書き写すとよいと聞きますが、全然頭に入りません。いい上達方法はありますか?

赤神 諒さん(以下、赤神さん)
時間がないので、私はやりませんでした。書き写さなくても、読めばいいと思います。あとはとにかくたくさん書きましょう。大量に書くことで文章力は上がっていきます。文豪でない限り、いきなり名文を書けるわけではないので、何度も推敲していく作業が必要だと思います。

藤岡 陽子さん(以下、藤岡さん)
私は描写力という面で、描写ノートを作って写したりすることはあります。「涙を流す」という一つのシーンでも、いろいろな作家さんがいろいろな書き方をしているので、本当に大事なシーンやいいなと思ったシーンは、その描写を吸収して自分の力にするために、書き写します。ただ、写経のように写しても文章がうまくなるとは思わないので、赤神さんがおっしゃったように、必ずしも写す必要はないと思いますよ。


Q.2 プロットを書いていて「話がつながらない」と思ったら、どうすればいいでしょうか?

藤岡さん
うまくいかないということはスタートの時点でどこかに無理があったということなので、私は「少し面倒だな」と思っても、設定を変えたり、話を一から組み直したりします。 また、プロットの時点で面白くないな、と思うものは絶対に面白くなくなりますので、そういう場合は、プロットの作成段階で「こういう事件が起きたら面白いな」と思うことを組み入れていくことが大事だと思います。この場合の事件というのは、すごく大きな事件ではなくてもいいんです。人と人の心のぶつかり合いや、心の摩擦のようなものが、物語の事件、面白さや山場になります。「ここでこの二人を喧嘩させよう」とか、「ここで感情を爆発させよう」という感じでいいので、プロットの時点で山場を作っておいてください。日常の話を淡々と書くような場合でも、感情の揺れのようなものを差し込んでいくと、すごく起伏のある物語ができると思います。



Q.3 セリフで登場人物を書き分けるにはどうしたらいいですか?

赤神さん
セリフだけでのキャラクター作りはなかなか難しいです。数名はできたとしても全員は無理でしょう。一人称、二人称や語尾の使い分けはキャラクターを立たせるうえで有効ではありますが、地の文で動作を入れたりして、誰のセリフなのかをわかるようにします。セリフはあくまでキャラクターの立たせ方の一つにすぎません。


Q.4 アクションシーンを描くときに工夫していることはありますか?

赤神さん
実はアクションに入るまでの盛り上げが大事だと思っています。アクションの典型である戦いを例とすると、戦いに至るまでの駆け引きとか環境、条件設定、人間関係、心理の動きといったものですね。小説の面白さはそこまでで半分以上勝負が決まるのではないでしょうか。戦いに至るまで積み木を丁寧に積んでいって、戦いのシーンでその積み木を崩すようなイメージでしょうか。その積み木の崩し方にも、読者の予想を裏切るような思わぬ展開がないといけない。
また、スピーディに読んでもらうことが大事なので、形式面でいえば、文章は短めにテンポよく、段落も変えて書いていく。誰のセリフか、誰の行動かが伝わるように書くのも大事です。主要登場人物がいる場合には、必ず全員に見せ場を与えます。それができないなら、その人物は、合理的な理由を作って登場させないようにします。


赤神さんが講師を務めた第1回の課題図書
『空貝 村上水軍の神姫』
(講談社 1700円+税)

女武将・鶴姫と仇敵・越智安成が衝突しながらも惹かれあっていく様を描いた、 ドラマチックな「歴史恋愛小説」!

Q.5 作品を最後まで面白く書きあげるコツはなんでしょうか?

藤岡さん
私はいつも、自分の作品が面白いかどうか、書いている時点では自信がないんです。でも最後まで書くというのが私にとってはすごく大事なことなので、プロットをラストまできちんと作って、全部書き上げてからもう一度勝負しますね。ラストまで書き上げてから読み返し、それでもやっぱり面白くなかったら、そこから「どうすれば面白くなるかな」と考えて、加筆したり、いらない部分を削除したりします。なので、自分で「面白い」と信じて、とにかく最後まで突き進むことが大事だと思います。本当に面白いかどうかというのは客観的な目で見てもらわないとわからないので、誰かに読んでもらうのもよいと思います。

赤神さん
私は最初から順番に書いていくタイプではなくて、書きたい箇所、書ける箇所から書くので、筆が止まったり進まない時は、他の場面を書きます。まずは半分を目指して書いてみると気持ちが楽になると思いますよ。
私はおめでたい性格なので、自分で面白い、面白いと思いながら書いているんですが、時々立ち止まって考えてみると「あれ、これ面白いのかな」と心配になる時もあります。やっぱり面白くないと思ったら、せっかく書いた一、二章をばっさり削除することもあります。大事なことは、書きながら常に「これで面白いのか、より面白くするにはどうすべきか」を考え続けることだと思います。 また、客観的には面白くても、何回も読んでいるうちに感覚がマヒして自分では面白さがわからなくなってくることもあります。少し時間をおいてみると、面白さを再確認できるかもしれませんね。


いかがでしたか?
執筆スタイル編」では、小説執筆の進め方や考え方に関する質問をご紹介しています。現役作家のお二人がどのように作品を作り上げているのか、必読です!


公募スクールでは、今後もさまざまオンライン講座を開講予定です。お楽しみに!